さむらい通信(保険代理店向け)第6号

【保険代理店の課題 その3:生産性向上】
今回より、保険代理店の生産性向上をシリーズ第3回に分けてお伝えいたします。
生産性向上においては、以下の3つの観点から述べさせていただきます。

第1回:業務改善
第2回:IT活用
第3回:人材育成と定着

尚、本件に関する内容に関しては、株式会社成長クラブ 代表取締役 尾籠裕之氏の著書を参考とさせていただいたことを申し添えておきます。
尾籠氏は、「保険代理店成長モデル(績文堂出版)」や最近では「生産性1500万円モデルの進展(保険毎日新聞社)」など、保険業界に関する多数の書籍を出版されています。

第1回:業務改善
生産性向上におけるフレームワークのなかに「5S」があります。ご存知の方も多いと思いますが、Sから始まる「整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)」です。主に工場など製造現場ではスローガンとしてこれが張り出されていることがよくあります。
私は、保険代理店の業務においても5Sを活用できると考えます。
整理とは、不要なものを捨てることです。整頓とは、整理したものを使いやすい場所に配置し、誰でも分かりやすいように表示することです。
現場用のコメントですが、これを代理店業務に置き換えると、
「営業社員が行うべき業務を整理し、事務社員との役割分担で業務を整頓し、誰でも分かるように情報を共有する」となるでしょう。

最大のポイントは、業務の見直しと役割分担の明確化であり、まず見直すべきは、営業社員の仕事の中身です。

多くの代理店では、更新手続き、書類作成、照会対応といった業務を、営業社員が担っています。しかし、ここで一度問い直してください。
営業社員が最も価値を生む仕事は何でしょうか?
答えは明確です。
新規契約の獲得、顧客開拓、関係構築です。

〇 実践ポイント
・保険更新・事務作業は事務社員が担当
・営業社員はテリトリー制を導入
・担当地域・顧客を明確にし、新規獲得に集中
これだけで、「営業が動く時間」=「売上を生む時間」が大きく増えていきます。

尾籠氏は、著書「保険代理店成長モデル」の中で次のように述べられています。
「保険代理店においては、効率化の目的はコスト削減ではなく、戦力増強であるべきです。そして、事務は代理店においての中核業務です。」

自動車保険などリテール商品の更改作業が大半を占める保険代理店において、この考えはもっともであると考えます。

営業社員の役割分担の改善イメージは以下の通りです

つぎに議論すべき問題は、担当制です。
多くの代理店では契約者に対して募集人の担当制が導入されています。そして、営業社員がその担当になっていることが多い状況です。

担当制がある業種は何かと聞かれたら、何が思い浮かぶでしょうか?

高級美容室・理容室(指名制)、パーソナルトレーナー、高級エステ・整体、富裕層向け会員制クラブ などが思い浮かびます。
また、金融業においては、銀行の法人担当や、投資信託・資産運用アドバイザーなどもそうでしょう。

これらに共通していることは何でしょうか?
 ・人によるプロフェッショナルな業務
 ・付加価値が高い
 ・信頼、安心感がある

担当制は、顧客のグリップ力が強いというメリットがありますが、属人的となるデメリットもあります。

属人性が高いと、生産性が上がりにくいと言われています。
属人性の高い業種では、「人が価値を生む」構造そのものが、生産性向上を阻害する要因になります。これは努力不足ではなく、ビジネスモデル上の必然です。

理由①
仕事が「人」に紐づき、分解・代替ができない
属人性の高い業種では、仕事が次のように構成されています。
・顧客情報は担当者の頭の中
・判断基準は担当者の経験値
・対応品質は担当者のスキル次第

つまり、「その人でなければできない仕事」が大量に存在します。
この状態では、分業できない、標準化できない、代替要員を立てられない。
結果として、1人あたりの生産量に上限が生まれます。

理由②
担当者が「付加価値業務」と「非付加価値業務」を両方抱える。
属人性の高い業種ほど、優秀な人材がこのようになります。

高付加価値業務
(提案・判断・信頼構築)
低付加価値業務
(事務、入力、調整、確認)
これらを同一人物がすべて担当しているケースが非常に多い。結果忙しい、残業が増える。でも売上は比例して増えない。これは能力の問題ではなく、仕事の設計上の問題です。

理由③
「人が辞める=生産能力が下がる」
属人性が高い業種では、担当者の退職、異動、休職、これらが起きた瞬間に顧客対応が止まり、売上が落ち、クレームが増えます。つまり、生産性が「個人の在籍」に依存しているのです。

理由④
「育成時間がかかる」
属人性の高い業種では、新人が一人前になるまでに、数年単位の育成が必要です。
つまり、人を増やしてもすぐ戦力にならない。教える側の生産性も落ちる。結果として全体効率が下がる。
この構造が、規模拡大=生産性低下を招きます。

理由⑤
IT・仕組み化が「人の価値を下げる」と誤解されやすい。
属人性の高い業種ほど、次の誤解が起きやすい。
「仕組み化するとサービスが画一化する」
「ITを入れると人の強みが消える」
「うちは人で勝負している」

その結果、情報共有が進まない。CRM(顧客管理)が形骸化する。属人性がさらに強化される。これは、人を守るつもりで、経営を弱くしている状態です。

重要な誤解
❌ 属人性が高いから生産性が上がらない
⭕ 属人性を「管理・設計」していないから生産性が上がらない
それでは、担当制はなくすべきか⁉
「担当者制」をやめずに仕組み化する考え方もあります。
多くのサービス業で「担当者制」は、顧客満足や信頼関係を支える重要な仕組みです。
問題は、担当者制そのものではありません。
問題は、担当者「だけ」が分かっている状態にあります。

担当者制を維持したまま生産性を上げるためには、属人性をなくすのではなく、属人性を「管理できる状態」にすることが必要です。

①「担当者=すべてを抱える人」にしない
②「顧客情報は個人の頭の中」から「組織の資産」へ
③「主担当+副担当」という二層構造をつくる
④ ITは「担当者を守るため」に使う

担当制=属人的として、拙速にやめる必要はないと考えます。
ただし、個人の自動車保険1件や火災保険1件の契約者まで営業社員が担当する必要はないでしょう。付加価値を提供できる可能性が高い契約者=企業物件などには担当者を置き、代理店全体としてフォローできる仕組みを構築すべきです。

属人性を数値化する
「保険代理店 属人性リスク診断チェックリスト」を作成しました。
金融庁・代理店実務を前提に設計しましたので、ご希望の方はメールにてご連絡ください。
無料にてご提供させていただきます。

次回も引き続き「生産性向上」についてを配信いたします。

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